制御盤におけるノイズについて

【 ノイズの伝わり方 】
ノイズを大きく2つに分けると、電送線路などの導体を伝搬する”伝導ノイズ”と電磁波などの空間を伝搬する”放射ノイズ”があります。私達が普段製作・使用している制御盤においては”伝導ノイズ”と”放射ノイズ”のどちらか、のみが発生するというわけではありません。半導体製造装置用の制御盤に限らず、制御盤内には多くの部品があり、それらをつなぐために大量の電線があるため実際に発生するノイズは、”伝導ノイズ”と”放射ノイズ”が複合して発生していると言えます。

【 ノイズの影響 】
私達が普段使用している電源の周波数(商用電源周波数)が50Hz/60Hzなのに対して、音波や電磁波などはそれよりも高い周波数となっています。身近な例でいいますと、ラジオや無線LANなどが上げられます。この2つに関しては、多くの人がノイズの影響を感じたことが多いのではないでしょうか。ここで申し上げたいことは、周波数は高いほどノイズの影響を受け易いということです。また、低い電流のものもノイズの影響を受け易いため、制御盤に使用されている信号電送路線などもノイズの影響を受け易くなっています。実際に制御盤を設計・製作、特にノイズがどのような影響を与えるかを検証しようとしても、その悪影響を明確にすることは非常に困難です。というのも、制御盤内の部品が誤作動することはほとんど無く、制御盤単体での検査でノイズの影響を確認することが難しいからです。半導体製造装置の制御盤に限らず、制御盤は単体ではその機能を果たすことがなく、制御対象の装置と組合せてはじめてその本来の動作・役割を果たします。制御対象にはモータなどの負荷やセンサーなどの制御機器が多数あり、ノイズの影響が最も出やすい部分になります。そのため、制御盤と装置側の両方を加味することで、最大限のノイズ対策を実施出来るのです。

【 対策の準備 】
制御盤を設計・製作する際に多くの電気部品を選定しますが、EMC規制によって既にノイズ対策を施してある電気部品が存在します。ノイズ対策の準備としてEMC対策が実施されている電気部品を選定することはノイズの発生防止に効果的です。日本の部品メーカーでもCE認証に対応している電気部品が多くあり、それらの認証の有無や使用方法はメーカーや取扱説明書によって確認することができます。つまり、EMC対策を施してる電気部品を正しく使用すれば、それだけで一定のノイズ対策は可能ということになります。部品の選定だけでノイズ対策をすることは一見簡単なことのように感じるかもしれませんが、半導体製造装置など精密な装置の場合には、最も効果がある対策方法となっています。

【 ノイズ対策の範囲と考え方 】
制御盤は多くの電気部品と配線によって構成されています。大きな制御盤になるとその使用数・量も増えることとなり、それだけ大型の装置になります。しかし、大きな制御盤であればあるほど、制御側と制御対象側とセットになったものを装置と考える必要があります。この考え方こそがノイズ対策をする上で、基本となります。例えばROHS指令の対策がされている電気部品はその内部構造だけでなく付属品のビスも含めてROHS対策がされています。制御盤の設計・製作だけで、装置全体のノイズ対策を完璧にすることはできませんが、まずは制御盤に使用する電気部品や付属品をノイズ対策品とすることが、装置全体、制御盤のノイズ対策と言えるのです。